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ピッチャーの肩の違和感(QLSS)

  • 2019年05月08日

QLSとは、肩関節後部にあり、この部分は大円筋の上縁、上腕三頭筋の外側縁、肩甲骨、上腕骨によって形成される空間を指し、その空間を腋窩神経(えきかしんけい)、後上腕回旋動脈などが通過しています。QLSS(quadrilateral space syndorome)とは、この部分で生じる絞扼性神経障害で、障害される神経は腋窩神経です。

症状は、肩関節後面から上腕外側に広がる放散痛、QLSの圧痛、水平内転強制による上腕外側への放散痛、上腕外側(腋窩神経の固有知覚領域)の知覚障害、肩関節外転筋力の低下、三角筋の萎縮などがあります。

 

腋窩神経は、腕神経叢の後神経束から分岐した後、腋窩部を背側に向かい、外側腋窩隙(QLS)を通過し、運動枝と知覚枝に分岐します。運動枝は三角筋と小円筋、知覚枝は上外側上腕皮神経として三角筋の表層にて上腕近位外側面にいきます。

腋窩神経が通過するQLSは、肩関節背側の三角筋の表層で、大円筋、小円筋、上腕三頭筋長頭と上腕骨の間に生じた外側部分に存在する四角形の間隙です。

 

外側腋窩隙(QLS)は、三辺が筋によって構成されているため、肩関節肢位や筋の緊張によってもスペースが変わり、腋窩神経を絞扼します。

腋窩神経が絞扼されると、肩関節後面と上腕近位外側の放散痛、上外側上腕皮神経の支配領域の知覚障害、肩関節外転筋力の低下、三角筋の萎縮、QLSの圧痛を生じます。

 

投球動作では、後期コッキング期では絞扼、フォロースルー期では牽引されます。繰り返される投球による肩周囲筋の肥大によってQLSの狭窄はさらに強くなり、筋へのストレスと炎症により硬くなりQLSSを引き起こすと考えられます。投球動作では肩関節外転位で内外旋を繰り返すことでQLSを通過する腋窩神経を絞扼して、QLSSを引き起こすことがあります。

アクセレレーションからボールリリースの直後までの期間に大円筋と上腕三頭筋が同時に収縮します。つまりボールをリリースする直前に肩は急激に外旋位から内旋位へと変化するため、肩内旋筋である大円筋が収縮します。またこの時、肘は伸展位をとるため肘伸筋である上腕三頭筋も同時に収縮します。またこれに拮抗して小円筋などの肩外旋筋群にも負荷がかかるので後方のタイトネスが高まると考えられます。

腋窩神経は上肢下垂位で一番弛緩して、肩外転・外旋位でもっとも緊張が高くなります。

肩外転・外旋位で緊張と圧迫が高まった腋窩神経に、大円筋、上腕三頭筋が収縮するとさらにQLSが狭小化して圧迫が強まります。

肩甲上腕関節後方が拘縮した状態で肩関節の水平屈曲をすると、肩甲上腕関節関節後方が伸びないため肩甲骨を上方回旋方向に変位させます。この拘縮はQLSが狭小化していることを示唆しています。肩甲上腕関節の拘縮に対し、肩甲骨を保持することにより上腕骨と肩甲骨に付着する筋に適切なストレッチングをすることが、QLSSの治療の一つと考えられます。水平屈曲の形だけとっても伸ばしたいところが伸びてないなんてことが起こるのです。


ピッチャーの肩肘痛に隠れているもの

  • 2019年05月02日

胸郭出口症候群は、腕神経叢の圧迫あるいは牽引による神経・血管症状を主体とする疾患です。

胸郭出口症候群解剖学的な異常からなる場合と、機能的な障害からなる場合があります。解剖学的な異常による場合は、徒手療法では効果が得られることは少なく、手術が選択されることが多いです。

機能的な障害により症状が出ている場合の多くは、普段の姿勢・スポーツ動作などの影響で出ることが多いので、筋のリラクセーションや運動療法などにより改善を目指します。

競技選手においては神経・血管症状があるということは当然パフォーマンスにも影響してくるので、早期の発見が重要です。

 

胸郭出口症候群の牽引型の肩甲骨は、外転・下方回旋位にあり、僧帽筋中部線維・下部線維の機能不全状態の、いわゆるなで肩の人に多くみられます。

 

牽引型の特徴は、荷物を持つとより症状が悪化することです。これは、肩甲骨を内転位に保つことができればラクになります。このことから装具療法も有効な治療法の一つですが、装具に頼れば筋肉は弱くなっていくので装具と併用するのが良いでしょう。運動療法では、肩甲骨の位置異常を変えるための筋のリラクセーションや僧帽筋中部・下部線維の筋力訓練をします。

牽引型の場合は腕神経叢の牽引ストレスを減らすことが重要です。

野球をやっている人にも胸郭出口症候群はみられます。その前に肘や肩の不調を訴えて来院することが多いのですが、肩肘の痛みは当然局所が傷んでいるのですが、機能的にみていくと、その根っこの部分の肩甲骨の位置異常・機能不全が多くみられるのです。

 

肩甲帯の機能を支配する腕神経叢について書いていきます。

腕神経叢は、C5~Th1までの神経根が椎間孔を出た後、頚の筋の間、鎖骨と肋骨の間、小胸筋の下を通って手にいきます。腕神経叢がこの部位で、神経、動・静脈が絞扼された状態を胸郭出口症候群といいます。

 

最初に腕神経叢絞扼がされる部位が斜角筋隙で、前壁が前斜角筋、後壁が中斜角筋で構成されています。

よくあるのが、パソコンの使用時などの不良姿勢で前斜角筋と中斜角筋の緊張が高くなると、前壁と後壁の間は狭くなります。斜角筋は第一肋骨にも付着しているので、第一肋骨が引き上げられることでさらに斜角筋隙は狭くなり腕神経叢が圧迫されます。

ここで腕神経叢が圧迫された状態斜角筋症候群といいます。

鎖骨下動脈も斜角間隙を通過しますが、鎖骨下静脈は前斜角筋の前を通過するので鎖骨下静脈は圧迫されません。

 

次の絞扼部位は肋鎖間隙で、斜角筋隙を通過した腕神経叢と鎖骨下動脈は、上が鎖骨、下が第一肋骨で構成された骨性のトンネルを通過します。。また、斜角筋隙を通過しなかった鎖骨下静脈も、肋鎖間隙は通過します。なで肩姿勢のように鎖骨が下制した状態では、トンネルが狭くなり、腕神経叢と鎖骨下動・静脈は圧迫されます。腕を上げて鎖骨が回旋した場合は、トンネルの前壁を構成する肋鎖靭帯も後ろに移動するのでさらにトンネルは狭くなり、腕神経叢と鎖骨下動・静脈は圧迫されます。

このトンネルで絞扼された状態を肋鎖症候群といいます。

 

最後の絞扼部位が小胸筋下間隙です。このトンネルは、上が烏口突起に付着する小胸筋で構成され、下が烏口鎖骨靭帯で構成される線維性トンネルです。

肩関節を外転させると、腕神経叢と鎖骨下動・静脈はこのトンネルを支点に向きが変わります。そのとき、腕神経叢と鎖骨下動・静脈に小胸筋が支点となり負荷がかかります。このように、肩関節を外転することで腕神経叢の絞扼が生じる症候群を過外転症候群といいます

 

胸郭出口症候群は、大人だけのものではなく小学生でもなることがあります。

大人子ども関係なく、野球をやっている人には投球側の肩甲骨の位置異常が多くみられます。これについては僕もいろいろ話を聞いてきましたが、頸反射を使うことにより頸部の筋の緊張が高くなり絞扼が起きて肩甲骨の動きを支配する筋の機能が落ちるのではないかと思っています。

今までどんな話があったかというと、ピッチャーは非投球側でバッグを持つから投球側の腹斜筋によって側屈がおきて肩甲骨の位置が下がっている説、投球時の身体を捻るのが外腹斜筋の作用で外腹斜筋と前鋸筋は筋連結があるから引っ張られて肩甲骨が下がる。などですが、斜角筋の緊張を落とすと肩甲骨の位置が上がってくることが多いので斜角筋っぽいです。もちろん他にもありますが。

なのでそれらの可能性を考慮しながら評価を進めていきます。

 

肘痛、肩痛が出たら胸郭出口症候群の可能性を初めから考えた方がいいかもしれません。なぜなら肩肘の障害は肩甲骨の位置の異常に起因するものが少なくないからです。スポーツ活動時の肩痛・肘痛を主訴に受診した約15%に胸郭出口症候群があったとするデータもあります。

上手な子ほど頸部の伸張反射を活用しています。と同時に頸部の筋の緊張も高くなりやすいといえます。

日ごろから頚回り、肩甲骨周りのケアをしておきたいものです。

 



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