外側広筋は、大腿骨の後面の粗線外唇から起始し、膝蓋骨、膝蓋腱を介して脛骨粗面に停止します。
大腿骨の外側部を広く覆う大きな筋で、皆さんがハムストリングと思っている大腿後面の筋が外側広筋だったりします。
硬さの見方は、うつぶせに寝て膝同士をくっつけて膝を曲げて踵をお尻につけるテストをした際に、自然に膝が開いてきてしまう人や、膝を閉じたままだと踵がお尻につかないけど膝を開くと付く人は外側広筋の硬さが疑われます。
外側広筋が硬いと何がいけないかというと、膝の最終伸展で働く内側広筋という筋があるのですが、外側広筋が硬いと膝蓋骨(お皿)を外側に引っ張ってしまって内側広筋が頑張って働いても膝を伸ばす効率が悪くなってしまうのす。
膝が伸びるときの力が弱いということは、歩く時の不安定性にもつながるし、当然スポーツのパフォーマンスも落とします。
手順としては、内側広筋の筋機能のチェック⇔外側広筋の柔軟性のチェック→ストレッチング等→トレーニングとするのが良いでしょう。
トレーニング前のストレッチングは筋力が落ちちゃうんじゃないの?というのもありますが、力が伝わりにくい状態でトレーニングするのも問題なので、僕は整えてからのトレーニングをお勧めしています。
外側広筋は大腿筋膜張筋、大殿筋とも筋連結があるので併せてストレッチング等をするとよい結果がえられることが多いです。
高齢者が膝の痛いときに多いものに変形性膝関節症があります。
中年以降の年齢層ではX線検査をすれば25~40%の人に変形があるといわれています。
変形性膝関節症の主な病態は関節軟骨の摩耗や変性ですが、一次性のもの(外傷や感染などの既往がない)が大部分を占めます。
一次性の原因にはO脚などの変形に伴う関節に加わる外力の増加や、肥満、筋力低下などがあげられます。
繰り返しの外力により徐々に悪くなるものといえます。
膝関節の内側が痛い人の歩行の特徴に、立脚相で膝が外側に動揺して内反が強くなるlateral thrustがあります。
また、多くの患者に股関節の内旋制限があり、膝関節がその影響を受けて悪くなっているものもあります。
また下腿は外旋位を取るものが多くみられます。
ただし、すべてがそうとは限らないので、治療のアプローチも一人ひとり違ったものになります。
実は変形は治りません。
じゃあ一生痛いの?ってわけでもなくて変形があるせいで正常な関節運動にはなりにくいかもしれませんが、正常な関節運動に近づければ痛くなくなることもあるのでそれを目指します。
アプローチとしてですが膝だけを見ててはなかなか良くなりません。
上下の関節(足関節、股関節)、上半身など全身を見る必要があります。
歩行時に最初に地面に接地するのは踵です。
入りが不味ければその後に影響が出ます。
なのでまずは足。
その足を運んでくるのは反対側の足(脚)なのでそちらもみる必要があります。
ただ、なにせ荷重がかかる部位だし意識してどうこうなるものではないのでインソールを使うのが良いでしょう。
次に膝ですが、膝が伸びない、下腿が回旋しているなどのマルアライメントを修正することも当然必要です。
膝関節そのものへの局所的なアプローチもしますが、膝関節をまたぐ筋はほとんどが骨盤に起始があります。
なので骨盤周囲の筋の機能へのアプローチも必要です。
次に上半身ですが、なんで上半身?って感じですが歩行は下半身がロコモーター、上半身はパッセンジャーに例えられます。
飛行機や車でお客さんが偏って乗ってたら車体には負担がかかりますよね的な話です。
上半身が前かがみ、のけ反っている、左右どちらかに傾いているなども下半身への負担を増やすのでそれぞれが良くなるようにします。
結局は全身みましょうということです。
野球肘には様々な種類があり、大きく分けて内側型、外側型、後方型があります。
また大人と子供では負担のかかり方は同じでも組織の強さが違うため、野球肘といっても分けて考える必要があります。
大人と子供で障害が発生する部分が変わるのは、大人は骨が強いので靭帯に負担がかかり、子供は靭帯などの軟部組織を傷めることは少なく、骨端核や骨端線に負担をかけます。
治療法もそれぞれ違いますが、共通していえるのは負担がかかる動作を改善していかないとまた同じ部位を傷めるということです。
安静にしていれば患部は回復するものでも、投げたらまた同じではいけないので、負担をかけた要因となっているものにアプローチします。
そうではなく手術が必要なものもあります。関節鏡などの侵襲の少ない手術もあります。まずはどのタイプの野球肘かを評価して、適切な治療を選択することが大事です。
肘関節には上腕骨、橈骨、尺骨の3つの骨があり、内側と外側にこれらをつなぐ靭帯があります。
内側型の野球肘は、ボールを投げるときの牽引力により骨や靭帯が引っ張られて裂離骨折や靭帯損傷などが起こるものです。肘が痛いといって来院されるなかで最も多いものです。遠投などの一回の強い外力で発生することがあります。
外側型の野球肘では圧迫により軟骨や骨が摩耗します。これは先に内側の野球肘で肘の安定性が損なわれたせいで起こるものもありますす。
早期に発見できれば問題なく治るのですが、レントゲンに写らないこともあるので注意が必要です。超音波画像観察装置だと早期の発見ができます。外側型の野球肘は痛みがなく進行していくものなので早期発見早期治療が重要です。
後方では骨同士の衝突で疲労骨折が起こったり、骨や軟骨が欠けたり骨棘ができたりします。
引っ張られる部分の腱の炎症が起きることもあります。
肘を伸ばす動作を繰り返すことで骨同士が衝突して骨のかけら(関節ネズミ)ができたりすることで曲げ伸ばしが徐々にできなくなってしまうものもあります。
速い球を投げたり、遠投などでは一回の投球での肘にかかる負担が大きいです。ボールを投げるときの肘への負担はレイトコッキング期だとボール150個分の負担がかかるそうです。カゴ満杯よりも大きい負荷が手に乗っかっているのです。当然、球数が多くなると負担が増えます。肘の負担は一回の負荷×投球数なので、一回の負荷が大きければ一発で傷めることもありますし、弱い力で投げてても球数が多ければいずれ傷めます。
僕は球数制限賛成派です。
狭義の肩関節は肩甲骨と上腕骨で構成される関節のことをいいます。
広義の肩関節は肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節、第二肩関節、肩甲胸郭関節のことをいいます。
今回は肩甲上腕関節の話です。みんなが思い浮かべる肩関節です。
こんなとこがずれるとかあるの?という感じですが、ほんのわずかな位置異常が投球のパフォーマンスを落とすので注意が必要です。
肩後方関節包が硬くなると骨頭の異常運動が起こります。野球をやっている人に多くみられます。
肩後方関節包が硬くなると、骨頭は肩外旋時に後上方にずれ、内旋時には前方にずれます。
特に肩外旋時の後上方へのずれは、レイトコッキング期に肩峰下でのインピンジメントを引き起こします。
これは、正常な肩外旋運動に必要な大結節が肩峰下をくぐる動きが、骨頭の位置がずれているためにスムーズにいかなくなるのです。
このときスムーズにくぐらないというだけでもすでにパフォーマンスを落としています。
肩外旋制限は、投球時の肘の内側への負担も増大させるため注意が必要です。
肩後方関節包が硬くなる要因は、フォロースルー時にIGHL(下関節上腕靭帯)後部線維に強い遠心性の力が加わり微細損傷をおこすためと考えられています。
三角筋後部線維、小円筋はフォロースルー時に遠心性に強く働き、腕が内旋して吹っ飛んで行くのにブレーキをかける働きをしています。
また、非投球側の股関節の内旋可動域に制限があるとフォロースルー時に肩関節の水平屈曲が強くなり、さらに肩関節後方への負担が大きくなってしまいます。
負担がかかり続けた組織はやがて硬くなり、骨頭の位置異常を引きおこします。
もう一つの骨頭の異常運動として、骨頭の前方へのずれがあります。これは肩の前方が緩いと起こります。肩外転外旋時には骨頭が前方にずれないようにIGHL前部線維がその役割をするのですが、骨頭が前方にずれたまま投げていると、外転・外旋でIGHLが強く伸ばされて、緩くなったままもとに戻らなくなります。
他には肩甲下筋が働いています。
肩前方の緩さが増大している選手の投球時には、アクセレレーション期での肩甲下筋の活動が低下しているといわれています。このような肩前方の緩さと肩甲下筋の機能低下は、骨頭の前方へのずれを大きくし、MER(肩最大外旋)時にインターナルインピンジメントを引き起こす可能性があります。
肩前方の緩さの要因には、投球時のhyper Angulation(肩水平外転の増大)があります。Hyper Angulationは肩全面の伸張ストレスが大きくなります。Hyper Angulationの原因として肩甲骨の上方回旋、内転可動域の不足等があります。上方回旋が少ないということは肘下がりにつながり、肘への負担を増やすことにもなってしまいます。
というわけで、肩関節(肩甲上腕関節)そのものへのアプローチも大切だし、肩甲骨(肩甲胸郭関節)へのアプローチも大切ということがいえます。
QLSとは、肩関節後部にあり、この部分は大円筋の上縁、上腕三頭筋の外側縁、肩甲骨、上腕骨によって形成される空間を指し、その空間を腋窩神経(えきかしんけい)、後上腕回旋動脈などが通過しています。QLSS(quadrilateral space syndorome)とは、この部分で生じる絞扼性神経障害で、障害される神経は腋窩神経です。
症状は、肩関節後面から上腕外側に広がる放散痛、QLSの圧痛、水平内転強制による上腕外側への放散痛、上腕外側(腋窩神経の固有知覚領域)の知覚障害、肩関節外転筋力の低下、三角筋の萎縮などがあります。
腋窩神経は、腕神経叢の後神経束から分岐した後、腋窩部を背側に向かい、外側腋窩隙(QLS)を通過し、運動枝と知覚枝に分岐します。運動枝は三角筋と小円筋、知覚枝は上外側上腕皮神経として三角筋の表層にて上腕近位外側面にいきます。
腋窩神経が通過するQLSは、肩関節背側の三角筋の表層で、大円筋、小円筋、上腕三頭筋長頭と上腕骨の間に生じた外側部分に存在する四角形の間隙です。
外側腋窩隙(QLS)は、三辺が筋によって構成されているため、肩関節肢位や筋の緊張によってもスペースが変わり、腋窩神経を絞扼します。
腋窩神経が絞扼されると、肩関節後面と上腕近位外側の放散痛、上外側上腕皮神経の支配領域の知覚障害、肩関節外転筋力の低下、三角筋の萎縮、QLSの圧痛を生じます。
投球動作では、後期コッキング期では絞扼、フォロースルー期では牽引されます。繰り返される投球による肩周囲筋の肥大によってQLSの狭窄はさらに強くなり、筋へのストレスと炎症により硬くなりQLSSを引き起こすと考えられます。投球動作では肩関節外転位で内外旋を繰り返すことでQLSを通過する腋窩神経を絞扼して、QLSSを引き起こすことがあります。
アクセレレーションからボールリリースの直後までの期間に大円筋と上腕三頭筋が同時に収縮します。つまりボールをリリースする直前に肩は急激に外旋位から内旋位へと変化するため、肩内旋筋である大円筋が収縮します。またこの時、肘は伸展位をとるため肘伸筋である上腕三頭筋も同時に収縮します。またこれに拮抗して小円筋などの肩外旋筋群にも負荷がかかるので後方のタイトネスが高まると考えられます。
腋窩神経は上肢下垂位で一番弛緩して、肩外転・外旋位でもっとも緊張が高くなります。
肩外転・外旋位で緊張と圧迫が高まった腋窩神経に、大円筋、上腕三頭筋が収縮するとさらにQLSが狭小化して圧迫が強まります。
肩甲上腕関節後方が拘縮した状態で肩関節の水平屈曲をすると、肩甲上腕関節関節後方が伸びないため肩甲骨を上方回旋方向に変位させます。この拘縮はQLSが狭小化していることを示唆しています。肩甲上腕関節の拘縮に対し、肩甲骨を保持することにより上腕骨と肩甲骨に付着する筋に適切なストレッチングをすることが、QLSSの治療の一つと考えられます。水平屈曲の形だけとっても伸ばしたいところが伸びてないなんてことが起こるのです。
リトルリーガーズショルダーは、小学校高学年から中学生の時期に、野球などの投球を行うスポーツで生じます。
高校生でみられることもあります。
上腕骨近位の骨端線という成長軟骨部が繰り返しの投球動作により離開していきます。
1球の全力投球や遠投で急に痛くなる場合もあります。日常生活には支障がないことが多く、見かけ上は肩の可動域制限もありません。
大人の場合だと、投球障害はほとんどがオーバーユースに起因する軟部組織の障害です。
しかし成長期の子どもの場合だと軟部組織の損傷は少なく、まだ骨端線や骨端核があるために弱い骨端部に負担がかかってきます。
骨端線の2~5倍の強度が関節周辺の関節包と靭帯にはあるといわれています。
そりゃ無理だわって話なのです。
しかも投球の際、リリース時には肩にかかる引っ張る力は体重の1.5倍といわれています。鉄棒にぶら下がっった時にもう一人小さい子がしがみついたくらいの負担がかかるのです。
骨端線離開がある時に我慢して投げるはあり得ないのです。
もちろん離開がない子でも投げすぎや全力投球はオススメしません。
通常は投球を1ヵ月から3ヵ月程度休止します。投球側の肩だけではなく、脊柱や股関節などの柔軟性が低下していることが多くみられるので、投球を休んでいる間にしっかりストレッチ等を行いますが、肩の痛みが出るようなことは避けましょう。ほとんどの場合で大きな後遺症は残さずに治っていきます。
痛みを我慢しながら投げていると骨端部で横滑りするようにずれてしまうことがあります。骨端線も閉じたりすることもあります。閉じてしまったら腕が長くならないってことです。速いボールを投げるためには不利になるので、何とか投げるのを我慢してほしいのです。
休止中もバッティングや走塁は続けても大丈夫なのでそちらをしましょう。もちろんやりすぎ注意です。
できること・やっていいことをしましょう。
骨端線離開は成長期の小中学生に多いですが、まれに高校生で再発するケースがあります。「まだ背が伸びるんだよ」と慰めますが、離開しなくても背は伸びます。余計なケガはしたくないのです。
ちなみに、
<リトルリーグの投球規定>
リーグ年齢
最大投球数 11~12歳 85球/日
9~10歳 75球/日
7から8歳 50球/日
必要な休養時間として
投球数 66球以上 4日間の休息が必要
51~65球 3日間の休息が必要
36~50球 2日間の休息が必要
21~35球 1日間の休息が必要
1~20球 休息日は必要ない
米リトルリーグ公式HPより
とされています。
他にも1日50球、週200球以内というのもあります。
骨端線離開の場合、ほとんどがビックリするような投球数で来院されます。
その他外野手のバックホームや遠投練習などでの損傷があります。
外野手は中継まで。
遠投練習禁止でいいです。だってそもそも意味がないと考えられているんですよ。
棘下筋(きょくかきん)は、その支配神経である肩甲上神経の解剖学的特徴から、野球の投球、バレーボールのアタック動作などで負担がかかるため萎縮しやすい筋です。
棘下筋の支配神経の肩甲上神経は、第5・6神経神経根より形成される上神経幹から分かれ、肩甲切痕を通過した後,棘上筋への運動枝と肩関節への関節枝を分枝し、棘窩切痕で内側に向きを変え棘下筋に運動枝を分布しています。
この肩甲切痕と棘窩切痕の2箇所が絞扼の好発部位です。
小中学生の投球障害肩の中にも、棘下筋の筋力低下や筋委縮が生じている例があります。これらの棘下筋の機能不全は肩甲上腕関節の安定性に影響します。リリース時の肩関節には体重の1.5倍ほどの牽引力がかかっているそうですから。筋が萎縮していては安定させられるはずもありません。棘下筋の萎縮を早期に発見することがその他の余計な障害を防ぐともいえます。
他のスポーツ障害同様、フォーム指導、外旋筋力強化などの予防及び棘下筋テストなどによる早期発見が重要です。
ただそのフォーム指導もその選手が指導の通りにできるとは限らないのが世の常でして。
できない理由や負担をかける理由が股関節の内旋制限にあることも多いのです。
投球やアタックのように肩関節外転外旋位から内転内旋位への運動は、肩甲骨も胸壁に対して前外方へ回旋するので肩甲上神経が肩甲切痕部や棘窩切痕で伸ばされることで損傷されます。
また、加速された上肢の減速ためにフォロースルー時に遠心性収縮を強いられることが棘下筋損傷の理由としてあげられます。
その負担を軽減するには、非投球側の股関節内旋可動域がフォロースルー時の上肢の減速に必要です。股関節が硬くていいことはないということですね。
仰向けに寝て、内股になる感じで親指を床につけてみると左右差をみることができます。
お尻のストレッチングで改善されることが多いです。
胸郭出口症候群は、腕神経叢の圧迫あるいは牽引による神経・血管症状を主体とする疾患です。
胸郭出口症候群は解剖学的な異常からなる場合と、機能的な障害からなる場合があります。解剖学的な異常による場合は、徒手療法では効果が得られることは少なく、手術が選択されることが多いです。
機能的な障害により症状が出ている場合の多くは、普段の姿勢・スポーツ動作などの影響で出ることが多いので、筋のリラクセーションや運動療法などにより改善を目指します。
競技選手においては神経・血管症状があるということは当然パフォーマンスにも影響してくるので、早期の発見が重要です。
胸郭出口症候群の牽引型の肩甲骨は、外転・下方回旋位にあり、僧帽筋中部線維・下部線維の機能不全状態の、いわゆるなで肩の人に多くみられます。
牽引型の特徴は、荷物を持つとより症状が悪化することです。これは、肩甲骨を内転位に保つことができればラクになります。このことから装具療法も有効な治療法の一つですが、装具に頼れば筋肉は弱くなっていくので装具と併用するのが良いでしょう。運動療法では、肩甲骨の位置異常を変えるための筋のリラクセーションや僧帽筋中部・下部線維の筋力訓練をします。
牽引型の場合は腕神経叢の牽引ストレスを減らすことが重要です。
野球をやっている人にも胸郭出口症候群はみられます。
その前に肘や肩の不調を訴えて来院することが多いのですが、肩肘の痛みは当然局所が傷んでいるのですが、機能的にみていくと根っこの部分の肩甲骨の位置異常・機能不全が多くみられるのです。
肩甲帯の機能を支配する腕神経叢について書いていきます。
腕神経叢は、C5~Th1までの神経根が椎間孔を出た後、頚の筋の間、鎖骨と肋骨の間、小胸筋の下を通って手にいきます。腕神経叢がこの部位で、神経、動・静脈が絞扼された状態を胸郭出口症候群といいます。
最初に腕神経叢絞扼がされる部位が斜角筋隙で、前壁が前斜角筋、後壁が中斜角筋で構成されています。
よくあるのが、パソコンの使用時などの不良姿勢で前斜角筋と中斜角筋の緊張が高くなると、前壁と後壁の間は狭くなります。斜角筋は第一肋骨にも付着しているので、第一肋骨が引き上げられることでさらに斜角筋隙は狭くなり腕神経叢が圧迫されます。
ここで腕神経叢が圧迫された状態を斜角筋症候群といいます。
鎖骨下動脈も斜角間隙を通過しますが、鎖骨下静脈は前斜角筋の前を通過するので鎖骨下静脈は圧迫されません。
次の絞扼部位は肋鎖間隙で、斜角筋隙を通過した腕神経叢と鎖骨下動脈は、上が鎖骨、下が第一肋骨で構成された骨性のトンネルを通過します。。また、斜角筋隙を通過しなかった鎖骨下静脈も、肋鎖間隙は通過します。
なで肩姿勢のように鎖骨が下制した状態では、トンネルが狭くなり、腕神経叢と鎖骨下動・静脈は圧迫されます。
腕を上げて鎖骨が回旋した場合は、トンネルの前壁を構成する肋鎖靭帯も後ろに移動するのでさらにトンネルは狭くなり、腕神経叢と鎖骨下動・静脈は圧迫されます。
このトンネルで絞扼された状態を肋鎖症候群といいます。
最後の絞扼部位が小胸筋下間隙です。このトンネルは、上が烏口突起に付着する小胸筋で構成され、下が烏口鎖骨靭帯で構成される線維性トンネルです。
肩関節を外転させると、腕神経叢と鎖骨下動・静脈はこのトンネルを支点に向きが変わります。そのとき、腕神経叢と鎖骨下動・静脈に小胸筋が支点となり負荷がかかります。このように、肩関節を外転することで腕神経叢の絞扼が生じる症候群を過外転症候群といいます
胸郭出口症候群は、大人だけのものではなく小学生でもなることがあります。
大人子ども関係なく、野球をやっている人には投球側の肩甲骨の位置異常が多くみられます。これについては僕もいろいろ話を聞いてきましたが、頸反射を使うことにより頸部の筋の緊張が高くなり絞扼が起きて肩甲骨の動きを支配する筋の機能が落ちるのではないかと思っています。
今までどんな話があったかというと、ピッチャーは非投球側でバッグを持つから投球側の腹斜筋によって側屈がおきて肩甲骨の位置が下がっている説、投球時の身体を捻るのが外腹斜筋の作用で外腹斜筋と前鋸筋は筋連結があるから引っ張られて肩甲骨が下がる。などですが、斜角筋の緊張を落とすと肩甲骨の位置が上がってくることが多いので斜角筋っぽいです。もちろん他にもありますが。
なのでそれらの可能性を考慮しながら評価を進めていきます。
肘痛、肩痛が出たら胸郭出口症候群の可能性を初めから考えた方がいいかもしれません。
なぜなら肩肘の障害は肩甲骨の位置の異常に起因するものが少なくないからです。スポーツ活動時の肩痛・肘痛を主訴に受診した約15%に胸郭出口症候群があったとするデータもあります。
上手な子ほど頸部の伸張反射を活用しています。と同時に頸部の筋の緊張も高くなりやすいといえます。
日ごろから頚回り、肩甲骨周りのケアをしておきたいものです。
離断性骨軟骨炎は成長期に起こる野球肘の一つです。
投球動作のコッキング~加速期にかけて生じる肘関節外反ストレスと腕橈関節の回旋ストレスによる圧迫剪断力がおもな原因です。野球では上腕骨小頭部の前方部に発生が最も多く、体操選手だと上腕骨小頭部の下部に多いです。これはストレスがかかる肢位が違うために起こります。
軟骨の摩耗、亀裂、剥離、欠損と進行していき、肘関節の曲げ伸ばしがしにくくなったり、関節遊離体(ネズミ)によるロッキングが起こることもあります。
様々な原因が考えられていますが、栄養障害、内分泌異常などの内的要因に投球時の繰り返されるストレスといった外的要因が加わって発生するという説が有力です。
サッカーでもみられるので、もはやなんなのさの様相を呈しています。
嫌煙家の僕としては受動喫煙が原因説を支持していますが、まぁこれも含めてということでしょう。
発育の個人差もありますが、一般的には10~11歳頃に多くみられます。
最初は内側側副靭帯の損傷から始まり、外反制動性が弱い状態で投球を継続していると、腕撓関節の関節面に強い圧縮とせん断荷力が加わり離断性骨軟骨炎を発症します。
いきなり外側型の野球肘を発症することはなく、まず内側の損傷があり、その後、不安定性のため外側型を発症していくということです。
肘外側の圧痛や腫脹がみられます。レントゲンでは肘関節4方向から撮影して正面像ではとらえられない病変を探しますが、軟骨障害はレントゲンで変化が認められる状態だとすでに進行期なので、超音波画像観察装置を用いて早期に軟骨の状態を把握することが重要です。
野球肘のガンとおっしゃる先生もいて、要は、なりたてに気づくことは少なく痛みが出たときはかなり進行しているということです。
病期の把握は治療上特に重要で、レントゲンでは病期を透亮期,分離期、遊離期の三期に分類します。
スポーツだけでなく、日常生活に支障をきたすこともあることを考慮すると、離断性骨軟骨炎の早期発見・早期治療が重要になります。
透亮期では投球禁止やシーネでの固定も有効ですが、分離期、遊離期、3ヶ月以上の安静治療にて良くならない場合は手術を考慮します。
固定を外した後は上腕骨小頭関節面にストレスを加えないことと、生理的な関節運動を心掛けながら軟部組織の拘縮、関節可動域の訓練をしていきます。
野球肘は、投球に伴う肘関節の外反負荷の増強が関与していて、これには内側側副靭帯の損傷、内側側副靭帯の緩さ、付着部の延長などにより外反負荷を制動する組織が破綻しているために痛みがでます。
これらを運動療法で修復することは不可能ですが、内側側副靭帯と同じく上腕骨内側上顆から起始する筋群の筋力強化を実施することで外反制動作用を得ることができると考えられます。
内側上顆には、長掌筋、橈側手根屈筋、円回内筋、尺側手根屈筋、浅指屈筋の5つの筋があります。これらの筋は共通の起始腱をもち、筋力強化をすることが野球肘の運動療法では重要となります。
投球フォーム指導では、アクセレレーションにおける肘下がりなど、過度な外旋ストレスで上腕骨小頭・橈骨頭に圧迫ストレスが加わらないよう指導します。
ただ肘へのストレスはボールの速さに比例していて、草野球のおっさんの全力の100km/時とプロ野球選手の軽く投げた130km/時だとおっさんの方が負担が少ないのです。意外ですが。
肘は治りやすいけど再発しやすいといえます。
投げられるようになることを治ったとするならば割と早く復帰できるともいえますが、緩さを残していたりとか、付着部の延長により外反制動性が損なわれた状態で投げ続けると外側型の野球肘(離散性骨軟骨炎)へと進行していきます。
しっかり治しましょうだし、そもそも傷めないようにしましょうなんですが、傷めたくてやる人もいないわけで。
予防としては全力投球するなです。
腸脛靭帯炎はランニングをする人に多いスポーツ障害であり、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆との間で摩擦が起こり、腸脛靭帯・その深層の滑液包に炎症を起こす疾患であると考えられています。
滑液包なんてないという報告もあるのですが、僕ではわからないし、選手にはそれほど重要なことでもないのですが、脂肪体の炎症と考える報告もあるそうです。
腸脛靭帯は大腿外側を被う筋膜が肥厚した部分で、靭帯という名前はついているものの他の靭帯とは違います。下腿の外旋により弛緩し、内旋により緊張します。また膝関節伸展・内反ストレスによる外側関節烈隙が開くのを制動し、lateral thrust(外側への動揺性)に対する動的安定機構として作用します。なので横方向への動揺が大きい歩き方をしている人の腸脛靭帯は緊張が高かったりします。
腸脛靭帯炎の発症には腸脛靭帯自体の緊張の高さが関与します。
腸脛靭帯の緊張に関する機能的な要因としては、アライメントに異常があるために起こる緊張があります。これに対してはインソールによるアライメント修正が手っ取り早いです。
足部のアライメントで考えた場合、回外足では足関節は内反位となるため足関節内反筋群が過緊張の状態になります。そのためknee-out toe-inのパターンが多くみられます。また、荷重が外側にかかる傾向にあるため、側方への動揺性を制御するために大腿筋膜張筋が過剰に働き、結果緊張が高くなり痛みが生じやすくなります。
腸脛靭帯は膝の進展屈曲に伴って前後に移動します。その時の摩擦で起こるのです。膝関節を伸ばすと腸脛靭帯は外側上顆の前方に位置し、膝を曲げるにつれて、腸脛靭帯は外側上顆を乗り越えながら後方へ移動していきます。腸脛靭帯は股関節の内転により緊張し、外転により弛緩します。ざっくり言うと脚を閉じているときの方が緊張がたかくなります。また膝関節を伸ばすと後方部は緊張し、前方部は弛緩します。
ランニング動作では、膝は屈曲位で接地した後、衝撃を緩衝するためにさらに膝が曲がります。その後、膝伸展運動により、重心を持ち上げ、足が離れる直前から膝が曲がり始め、足を振り上げます。その後、足を振り出し足が再び地面に接地します。このように、1ランニング周期中に2度膝の曲げ伸ばしがが行われます。そのため、ランニングで膝の曲げ伸ばしが繰り返されることによって、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の間に大きな圧縮力・摩擦力が生じることになります。
自転車競技でも膝は繰り返し曲げ伸ばしされるので負担がかかってなくはないですが、側方への制動をする必要はランニングほどでもなく、痛くなった場合は普段の姿勢・動きを見直すとよいでしょう。
大腿筋膜張筋と筋連結がある外側広筋は、大腿外側部を広く覆い大腿筋膜に覆われています。腸脛靭帯の緊張が高くなれば、大腿筋膜の緊張も高くなり、それにともなって外側広筋の緊張も高くなります。
なので筋連結を考慮したコンディショニングをする必要があります。
また筋緊張を起こさせないために正しいフォームを身につける、そのための静的・動的アライメントの改善、そのためのインソールとオチはインソールということでした。