アキレス腱炎は、アキレス腱部の疼痛性疾患で、多くはランニングやジャンプを繰り返すスポーツ選手にみられます。腱自体の炎症であるアキレス腱炎と腱傍組織(paratenon)などの炎症であるアキレス腱周囲炎がありますが、明確に区別するのは難しいです。
一般に足関節の背屈による伸長と、筋肉の収縮力などで発症します。
発症機転によりいくつかのバリエーションがみられます。
ランニングやジャンプでの遠心性収縮時の伸長ストレスや回旋ストレスが主な原因となりますが、靴や路面などの環境要因も関与します。
下腿三頭筋からアキレス腱の柔軟性をみることが重要で、回内足はアキレス腱への回旋ストレスが強くなるので足部のアライメントのチェックも必要です。
アキレス腱の内側に発生する人は、支持脚がトーアウトしているとアキレス腱内側部の伸長ストレスに加えて回旋ストレスがかかります。これは路面の傾斜や靴の踵部の内側の減りによる傾きで、踵骨が回内を強制されたときにも同じような状態になります
アキレス腱外側部の痛みはほぼ上記の反対ですが、方向転換では前述同様の状態でも踵骨が回外していたときその力はアキレス腱外側部への伸長ストレスを増大することに注意しなければなりません。
治療法としてはまず運動を休止します。疼痛が激しい場合は松葉杖の使用などで患部の負担を軽減し、炎症に対してアイシングを行います。下腿三頭筋のストレッチングは、膝関節を伸展位と屈曲位で行うことで、腓腹筋とヒラメ筋のストレッチングを効果的に行います。疼痛が改善すれば、弾性バンドなどの抵抗運動から下腿三頭筋の筋力強化を開始し、カーフレイズまで行えるようにします。
走行開始時には、インソールにヒールパッドを入れて踵部を補高し、アキレス腱の緊張を緩和する方法もありますが、筋を短縮させていることになるので慎重に行う必要があります。
脛の内側の痛みにシンスプリントというものがあります。
シンスプリントは運動時や運動後に下腿内側下1/3にみられる疼痛性疾患で、「脛骨疲労性骨膜炎・過労性脛部痛」ともいわれ、ランニングやジャンプ動作の多いスポーツで多くみられます。
その病態については骨膜炎、筋膜炎、過労性骨障害がいわれており、特定されていませんが、overuseに起因することには異論がありません。急激にトレーニング量を増やした際に生じることが多いです。
素人病なんて言ってる人もいました。もちろん違いますが。
後脛骨筋・長趾屈筋などは脛骨後内側面から起始し、立脚期に足関節が背屈・回内し、足アーチが低下する際に足部を安定させます。そのため走行時に牽引ストレスを受け起始部に炎症を引き起こします。これがシンスプリントの原因とも考えらています。
アライメント異常との関係が強く、後足部の過回内で発症するタイプと、過回外で発症するタイプの2種類に大別されます。
発症要因の1つと考えられる足関節の背屈制限の評価が必要で、背屈制限のため脛骨の内側に負担をかけていることもあります。また筋力低下は走行時の衝撃緩衝作用を低下させる可能性があるので、腓骨筋や後脛骨筋などアーチをサポートする筋をチェックします。
また硬い路面、すり減った靴など練習環境も発症要因となるので、練習環境も確認する必要があります。
痛みが強い場合はランニング・ジャンプ動作などは中止して、自転車や水中運動などで患部に負担がかからないようにして体力の低下を最小限にするように努めます。安静時期であっても患部外のトレーニングは積極的に行います。
シンスプリントを起こすアスリートはknee‐inの姿勢をとることが多く、特に股関節伸展・外転筋群のトレーニングが重要です。
急性期を過ぎたら、下腿後面の筋を中心にストレッチングを行います。下腿や股関節外転筋の筋力強化も行います。後脛骨筋は足部アーチを保持するもっとも重要な筋とされています。
運動を再開する際には回内足、回外足、足アーチの低下に対してインソールも考慮します。復帰の目途は通常、トレーニング量の減少後1~2週ですが、重症化すると3ヶ月以上かかるケースもあるので運動開始を誤らない必要があります。
最初からインソールを入れておくのがいいでしょう。
膝の内側の痛みに「鵞足炎」というものがあります。
鵞足炎はランニングを主体とした反復する膝の屈伸による鵞足部での摩擦障害と考えられています。
変形性膝関節症に併発していることも多いです。
膝関節を曲げる筋である半腱様筋、薄筋および縫工筋の脛骨付着部は、脛骨粗面の内側に腱が扇状に広がり脛骨骨膜に移行し、この部分が鵞足(がそく)と呼ばれています。これらの筋は膝関節の屈曲・内旋作用があり、ランニング動作では遠心性収縮による減速機能を担うため強力な力が鵞足部に加わります。
ランニング動作で筋の付着部周囲に炎症が生じると、膝関節の内側の膝窩部関節裂激から半腱様筋などの付着部である鵞足に腫脹、圧痛が出ます。関節裂激付近にも痛があるため、内側半月板後節の障害との鑑別が必要な症例もあります。
疼痛は荷重位で下腿外旋での屈伸動作で誘発され、下腿内旋での屈伸動作において軽減します。
knee-in to outを主体としたアライメント異常の存在が疼痛発生因子を増幅させ、疼痛が長期にわたり残存する原因と考えられています。
アライメント異常の影響が強い症例では、インソールを使うことが治療期間の短縮につながります。
最初からインソールを使っておくのがいいです。
あわせて正しいウエイトトレーニング、ムーヴメントトレーニングをするといいです。
思春期の子に起こりやすいものに思春期腰椎分離症があります。
これは上下の関節突起間部に起きる疲労骨折です。
中学生くらいの子で身体を反らすと痛い場合は分離を疑います。
思春期分離は下肢の硬さが影響していることが多いです。
特に股関節屈筋群の硬さが原因となるので予防のためにもストレッチングは有効です。
疲労骨折を早期に発見できた場合は骨癒合が期待できますが、
スポーツ選手に多い腰椎分離症は思春期分離が偽関節化してしまったものであり骨癒合することはありません。
分離は5つある腰椎のうち、第4、5腰椎に多くみられます。
左右の分離で偽関節になってしまうと腰椎すべり症に進行することもあるので、早期発見、早期治療で骨癒合を目指します。
ただ骨癒合が得られず、偽関節になったとしてもスポーツ選手をあきらめる必要はありません。
スポーツ選手の約30パーセントに分離がみられるというデータもあります。
一般の人にも約5パーセントあるそうです。気づいてないことも多いです。
大殿筋の伸長性の低下のため股関節内旋による骨盤の回旋が上手くできず、
腰椎に回旋ストレスがかかっていることもあります。
また、バッティング練習や素振りの際、マスコットバットという通常より重たいバットを振ることがありますが、
この練習も回旋によるせん断力が分離のリスクを高めます。
またフォロースルーの際、最後まで両手でバットを握っていることも負担が大きくなります。
ちなみに振る力を付けようと重たいバットを振るのは腰椎への負担が大きいだけで、
狙った効果は得られないというなんとも残念な練習です。
その他、伸展ストレスによるせん断力による分離も多くみられます。
伸展ストレスを減らすには大腿筋膜張筋、腸腰筋の柔軟性が、回旋ストレスを減らすには大殿筋の柔軟性が必要です。
ふくらはぎの肉離れは、30歳以降のスポーツ愛好家に多くみられます。
ふくらはぎは腓腹筋のことを意味します。
テニスをする人に多くみられることからテニスレッグともいわれます。
急な減速動作や方向転換を行った際に腓腹筋が過大な遠心性収縮を起こしたときに発生します。
ほとんどが腓腹筋内側頭の抹消付着部に生じ、受傷時は誰かに蹴られたような感覚や、ボールが当たった様な感覚を覚えることもあり、断裂音が聞こえることもあります。
症状は歩行時痛、損傷部に一致した圧痛、その周囲の腫腫、足関節背屈時の痛みなどがあります。
エコー観察では、腓腹筋とヒラメ筋の間に断裂を示唆する低エコー像がみられます。
鑑別が必要な疾患に深部静脈血栓症があります。
外傷をきっかけに痛みが出たり腫れたりします。
通常肉離れだと皮下出血斑が出ますが、この場合は出ないので注意が必要です。
初期の免荷、圧迫が不十分な場合、血腫の吸収、消失に3か月以上かかることもあります。
第5中足骨疲労骨折はJones骨折といもいいます。
これは、この症例を報告したJones氏にちなんで名前が付けられています。
サッカーやラグビーなどで多くみられ、カットプレーなどで足の外側に体重がかかるのを繰り返すことで第5中足骨基部にストレスがかかり折れてしまうと考えられています。
Jones骨折は発生当初はレントゲンに写らないこともあり、痛みを我慢しながらプレイを続けたため完全に折れてしまうこともあります。
Jones骨折で折れる部位は血行が少なく骨癒合しにくいので、保存療法で治りにくい場合は手術が行われることもあります。
骨癒合の経過をみて可動域訓練、筋力訓練などをします。
サッカーやラグビーなどを続ける場合は、足底板を入れることを勧めることもあります。
誰でも怪我はしたくありません。
怪我をしやすい人もいます。
特徴としては全身の関節の弛緩性の高さがあげられます。
これは生まれつき靭帯が緩く、関節の安定性が低く、捻挫などの関節障害が起きやすいです。
ただ体操競技や新体操など、美しさを求められる競技では有利に働くことが多いです。
筋力の不足も怪我につながります。
必要な時に必要なだけの筋力を発揮できず、自分の身体を安定させられないということも怪我につながります。
アライメント(骨の配列)の異常も怪我をしやすいといえます。
例えばX脚などは膝が外反しているため、前十字靭帯を損傷しやすくなります。
全身の関節弛緩性が高く、アライメントも悪く、筋力もない状態でスポーツをするのは怪我のリスクが高いといえます。
関節の弛緩性が高いのはしかたがないのですが、
アライメントを整えたり、筋力をつけることは努力次第でなんとかできることが多いです。
代償運動は、関節運動の主動作筋の機能不全や麻痺によって、本来その関節運動の主動作筋が行う運動を、他の筋が代償
しているものをいいます。
例としては、側臥位で股関節を外転させる際、中殿筋の機能不全があると大腿筋膜張筋や腰方形筋で代償していることがあ
ります。
いつも腰が痛い人は、もしかしたら中殿筋の機能不全のせいで腰方形筋が過剰に働いているかもしれません。
大腿筋膜張筋が代償しているせいでかたくなり、骨盤前傾位になっているかもしれません。
スポーツの練習に先立ってやっておく必要のあるものにアライメントのチェックがあります。
ほとんどの故障の原因はマルアライメントのため局所的に負荷が集中したため起こります。
練習を休んで痛みがなくなったとしても、以前と同じフォームで練習を繰り返すとまた痛くなったりします。
スポーツが上手くなりたかったら良いフォーム、良いフォームにしたかったら良いアライメント。
アライメントも動的と静的があって、動的に良くなりたかったら先ず静的に良くある必要があります。
真っ直ぐ動きたかったら真っ直ぐ立つ必要があります。
真っすぐ立てない奴は真っすぐ寝れません。
だからと言って就寝時に気を付けの姿勢で寝てくださいって話ではありません(笑)
姿勢を作っているのは筋。動的も静的も。
筋に目を向けましょう。
急性疾患は時間の経過とともに改善していくものですが、
慢性疾患となると時間の経過とは関係なくずっと痛かったり、よくなったと思いきやまた痛みが出てきたりします。
慢性疾患となると、睡眠障害、疲労、感情なども痛みの程度に影響します。
痛みが発生した際、楽観的な人ほど早く回復していく傾向にあるといえます。